ご当地食の旅
ウニしゃぶ(黄金のスープに魚の切り身市)
ウニというと北海道のウニ丼を思い起こす人が多いだろうが、関西では兵庫県の淡路島(南あわじ市など)が隠れたウニの名産地だ。その淡路島にちょっと変わったウニ料理があると聞き、訪ねてみた。
淡路島の最南部、その先は四国の徳島県に入る大鳴門橋の少し手前の丘の上に「絶景レストランうずの丘」はある。
平日でもお客が多いレストランで運ばれてきたのは茶色というよりも黄金色のスープが入った鍋とウニ、串に刺された魚の切り身、ヌードル、ごはんなどだ。
「このスープは和風だしをベースにウニを入れたものです」と説明するのは同レストラン総料理長の藤見泰之さんだ。このスープに魚の切り身を浸し、しゃぶしゃぶのように湯がいていただく。ウニのスープが魚に染み込み、ふつうの鍋料理とは違ったウニの風味が醸し出される。この日は鯛、サワラ、太刀魚の3種類が用意された。
ウニをこのスープにひたして食べると、より濃厚なウニが味わえる。「ウニはしゃぶしゃぶにしてもいいし、ご飯に乗せて食べてもおいしいですよ」と藤見さん。もったいないので、しゃぶしゃぶとご飯乗せの両方を味わった。
極めつきはウニのスープの雑炊。ご飯をスープに入れてなじませるとご飯がスープをほとんど吸収して、ウニ飯の出来上がりだ。ウニの味がご飯に染み込み、これまで味わったことのない濃厚なウニ飯となった。
この日食べたのはとげのある殼が黒い「黒ウニ」で、7月中旬に紫色の「赤ウニ」に切り替わる予定だ。赤ウニの方が大粒でどっしりしており、黒ウニよりも人気があるという。旬の時期は黒ウニが12月~5月なのに対し、赤ウニは7~9月と短く希少だ。
雑炊うま味染み込み濃厚
黒ウニを使った「海鮮うにしやぶ」(写真上)は4400円、7月中旬に赤ウニヘ切り替わると、5720円程度だ。
このウニしゃぶを考案したのが藤見さんだ。淡路島で生まれ育って子供のころから当たり前にウニを食べていた。しかし、島外のウニと比べてみて、淡路島産のうまさを再認識した。
藤見さんによると、雨水が淡路島のミネラルなど土の養分を海に流し、淡路島が接する明石海峡、紀淡海峡、鳴門海峡の流れでまんべんなく島周辺に行き渡り、ウニのほかハモなども含めた豊かな漁場を形成しているという。
藤見さんは同レストラン運営会社に就職後、他の職種を経て調理を担当するようになり、ウニを生かしたこれまでにないメニューを考え始めた。最初はウニ鍋に挑んだが、ウニはスープに溶け独特の磯臭さでうまくない。ウニ飯なら他地域でもやっている。
こうした試行錯誤の末、編み出されたのがウニしゃぶだった。2014年に提供し始めてから8年以上続くロングセラーとなった。藤見さんはその後もウニしゃぶの具材を広げ、昨年から淡路牛、今年からはハモやアワビ、足赤エビの極上メニューも始めた。
ウニは高級食材で、量を追うと高価になる。うずの丘ではウニの量を抑えながら様々な食べ方をすることでウニのうまみを引き出している。
この度は素敵な記事でご紹介いただき、ありがとうございました!